日本総合悲劇協会Vol.6『業音』

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第3回 ゲスト:平岩紙





初演に続いて『業音』に参加する平岩紙が登場!今作の主人公・土屋みどりを演じる彼女に宮崎吐夢が迫ります。

(※この対談の完全版は劇場で販売する『業音』公演パンフレットに収録します。)





吐夢 今回の再演って、どういう経緯で決まったのか知ってる?
平岩 松尾さんは何年も前から「『業音』をやりたいんだ」って言ってましたよね。
吐夢 僕はそれ、聞いていなかったのだけれど、「荻野目さんの役をやってほしい」って言われたの?
平岩 「もし『業音』をやるとしたら、どう?」って。そのときは「いやいや、無理ですよ!」って言ったんですけど。
吐夢 どうして無理だと思ったの?
平岩 荻野目さんが演じた役を自分が演じるなんて、できないと思って。「私、荻野目慶子です」ってセリフで始まる芝居だから、「『私、平岩紙です』で始まっても、ずっこけません?」って。「そこはまあ、変えるけど」っておっしゃってましたけど、そのときは全然無理でした。
吐夢 なのに、やろうと思えたのは何故? そろそろ年貢の納め時、みたいな?
平岩 最初に言われてから3年後ぐらいに、松尾さんから「やっぱり『業音』をやりたい。これをやらないと演出家として死にきれない」みたいなことを言われて、本気で考え始めたんです。松尾さんはほんっとにやりたいんだなって思ったし、自分も年齢とともに図太くなって、昔ほど細かいことを考えないようになっていたので、ようやく「向き合ってもいいかな、挑戦してもいいかな」って気持ちになったんですよね。やってみないとわからないかなって。
吐夢 僕、『ドブの輝き』っていう、松尾さんと宮藤(官九郎)さんの2本立てに井口昇さんの映像が挟まる公演のときに、松尾さんが書いた「アイドルをさがせ」のほうで一応主役っぽい役をやったじゃないですか。
平岩 そうでしたね。
吐夢 主役なんてとても無理だろうってプレッシャーに押しつぶされそうになってたんだけど、いざやってみたら、主人公って行動原理とか心情の流れが全部、台本に書いてあるから何も考えなくてよくて、すごくラクだったのね。いや、長台詞とかもあったし、もちろん大変は大変なんだけど(笑)。今までの飛び道具的な役に比べて、台本の余白を自分で埋める必要がなくて、いるだけでいいというか、主役って意外と何もしなくていいんだなあって思ったんですよね。
平岩 ああ~、確かにそれは感じますね。「なんかやんなきゃ感」がないかもしれない。今回の『業音』で言うと、次から次へと面白い人たちがまわりに出てきて、私は受け身だから、そういえば変なプレッシャーがないかも、と思います。
吐夢 だから、主役をやらせてもらえるなら、無理だなと思ってもとりあえずやってみたほうがいいですよ。見える景色が違うから。って今、僕はどんな立場で言ってるのかわからないんですけど(笑)。
平岩 (笑)そうですね。謙遜ばかりする必要はないなと思います。自分が大人計画で主役をすることはないと思ってましたけど……。


(※この対談の完全版は劇場で販売する『業音』公演パンフレットに収録します。)